メーカーさんに聞いてみよう

東海家具 野村さんにインタビューしました。


こんにちは、インテリアコーディネーターの山下です。今回は小江戸装飾でメインに扱っており、とても人気のある東海家具製品について、東海家具の野村さんにインタヴューをさせて頂きました。野村さんは勤続30年以上、この春ついに定年退職を迎える大ベテランの方です。


東海家具の歴史に始まり、主要シリーズコンセプト、一押しアイテム等かなり幅広くお話が聞けました。少しでも皆様の購入時の参考になればと思います。ぜひ、お楽しみください。


小江戸装飾 IC山下(写真左)  東海家具 野村さん(写真右)野村さん


東海家具 野村さん 以下、N

小江戸装飾 IC山下 以下、Y



1,東海家具について

東海家具について


Y、野村さん、本日は東海家具商品について、いろいろお聞かせください。よろしくお願いいたします。

N、こちらこそ、よろしくお願いします。



Y、まずは東海家具ベネチアシリーズは知っていても東海家具を知らない方も多いのではないかと思いますので、簡単に東海家具について教えていただけますか?

N、東海家具の始まりは1957年、静岡で家具を作り始めました。60年近い歴史があります。本社は静岡県静岡市、営業本部は藤枝市にあり、発送は藤枝市から行っています。本社には企画室があり、デザインも東海家具内で行っています。


家具の生産は40年ほど前から工場をインドネシアに移し、現在もインドネシアの工場で行っています。一部国内生産品もあります。インドネシアの工場には職人さん(工員さん)が約500名以上働いており、工場では家具の他にピアノの製造、塗装も行っています。



Y、東海家具の販売理念のようなものはありますか?

N、日本のメーカーではあまりないクラシックスタイル、その入門編になるような家具を、なるべく買いやすい価格帯で提供し、エンドユーザー様にワンランク上の暮らしを実現していただく手助けをすることです。


東海家具オフィシャルHPはこちらから>>



東海家具、シリーズ別色見本はこちらから>>



2-1.主要商品、ベネチアについて

ベネチア家具


Y、東海家具の主要シリーズのコンセプトについて聞かせてください。まずは、1番人気のベネチアからお願いします。

N、はい、ベネチア家具のコンセプトとしては、イタリア家具のデザインを再現したモデルになります。天板は、主材のマホガニーの木目を活かした矢羽張り(ヤバネバリ)です。またベネチア家具全てのシリーズに象嵌(ぞうがん)が施されています。


※矢羽根貼りサンプル画像>>


※象嵌サンプル画像>>


※象嵌(ぞうがん)についてより詳しく(メーカー発行PDF)>>


インドネシアの職人さん達は、椅子の脚のデザインによくみられる、くり棒加工のような細かい作業を得意とするので、こう言った部分に技術が生かされています

また引き出しの前面が曲線なのも大きな特徴です。家具は直線の表現は簡単ですが、曲線を作るのはとても手間がかかり技術を要するのですね。



Y、主材はなんですか?

N、マホガニーとMDFです。強度がかかる脚部のような材を縦に使う部分ではマホガニー無垢材を使用しています。


※MDFとは>>



Y、ぜひ知ってほしいベネチア家具の見えないこだわりはありますか?

N、まずは天板など表面に施された、スパッタリングという、黒い点を散りばめたようなクラシック家具の塗装技法ですね。使い古した味わいを出すための「汚し」です。時々汚れですか?なんてお問い合わせをいただくのですが、アンティーク加工の一つだと思っていただければと思います。


※スパッタリングサンプル画像>>


もう一つのベネチア家具の見えない特徴は全塗装です。引き出しの中まで塗装されています。ベネチア家具をもしお持ちの方は、引き出しを開けて見てください。中までしっかり塗装されていると思います。今まで何気なくお使いになられていたかと思いますが、実はそんなとこにもこだわりが隠れています。


※ベネチアの全塗装サンプル画像>>


また、東海家具全シリーズに言えることですが、取っ手、蝶番等の金具部分も東海家具のオリジナル商品です。あえて最新の金具を使わず、古いタイプのものにしています。



Y、ベネチア家具がこんなに愛される理由はなんだと思いますか?

N、まず、クラシックスタイルが根強く愛される理由として、海外旅行に出かける際に目にすることが多いこと、高級ホテルでクラシックスタイルの家具を目にすることが多いこと、朝の連続ドラマで、明治から昭和という時代設定が多く使われ、クラシックスタイルの家具がよく登場すること、等がこのスタイルの根強い人気の理由だと思われます。

ベネチア家具が選ばれる理由としては、まず、クラシックスタイルを作っているメーカーがあまりないこと。またはあってもとても高級でなかなか一般家庭では手が出ないことがあります。その中で当社のベネチアは、ワンランク上の家具を買おうと思った時に、決して安価なわけではないですが、買いやすい価格設定になっていることが選ばれる理由ではないかと思われます。また、国内のメーカーのため、日本人が使いやすい設計であるということも人気の秘密なのだと思います。


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メーカー発行ベネチアマニュアル(PDF)はこちらから>>



2-2.主要商品、ケントハウスについて

ケントハウス家具


Y、2番人気のケントハウス家具についてお願いします。

N、ケントハウスのコンセプトはブリティッシュスタイルです。シリーズが始まった当初は、椅子の生地もストライプでした。しかし、ブリティッシュスタイルをそのまま持ってくると日本人には少し武骨すぎるのですね。ですのでケントハウス家具はブリティッシュでありながら、日本向けにアレンジしてあります。



Y、ケントハウスの見えないこだわりはありますか?

N、重なりますが、イギリススタイルの家具を日本人に会うようにアレンジしているところです。また、引き出しの中は、ベニヤの色むらをなくすために、漂白し清潔感をもたせてあります。


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2-3.主要商品、リモージュWについて

リモージュW家具


Y、次に人気のリモージュWについてお願いします。

N、リモージュWは、主材がMDFとマホガニーで、プリンセス家具のコンセプト、白で塗りつぶしなのが特徴です。強度がかかる脚部のような材を縦に使う部分では、マホガニーの無垢材を使用しています。


※MDFとは>>


リモージュW家具商品一覧ページはこちらから>>


メーカー発行リモージュW・フルールマニュアル(PDF)はこちらから>>



2-4.イチオシ商品、フルールについて

フルール家具


Y、そして、東海家具これからの一押し。フルールについてお願いします。


N、まず、材については、白がリンデンとMDF。リンデンはヤナギ科であまり木目がないのが特徴です。あまり木目のない材だからこそ、塗りつぶしではない白のあの色が出せるわけです。そしてダークカラーがマホガニーとMDFです。


※MDFとは>>



Y、このシリーズの特徴はなんでしょう?

N、フルールのWHシリーズは、同じホワイトでもリモージュとは違い木目を活かした白になっています。この色を出すためにあえてダークとは材を変えています。ダークはマホガニーなので、ベネチア同様天板等の矢羽張り(ヤバネバリ)が特徴です。これはフルールではダークカラーのみの特徴となっています。


※チェスト120DM前面矢羽根貼りサンプル画像01>>


※チェスト120DM天板矢羽根貼りサンプル画像02>>



Y、このシリーズの評判はどうですか?

N、おかげさまで、とても評判が良いです。特に売れ筋はホワイトのドレッサーですね。


ホワイト ドレッサー商品詳細ページへ>>



Y、当店でもすでに何個か実売が出ています。最近の方々はあまりドレッサーを使わなくなっているのではないか?と思っていましたが、野村さんから見てどうですか?


N、これだけ実売が出ているのだから、そんなことはないでしょうね。


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メーカー発行リモージュW・フルールマニュアル(PDF)はこちらから>>



Y、なるほど、各シリーズにいろんなこだわりがあって非常に興味深いです。目からウロコのお話もたくさんありました。では、生産についてもう少しお話をお聞かせください。



3.生産について

生産について


Y、40年ほど前からインドネシアに工場を移したとのことですが、日本から移動したことで品質の低下等はありませんでしたか?

N、インドネシアで生産を始めた40年前には品質や梱包が不安定なこともありました。しかし、その都度改良を重ね、今ではそれらの問題は全てクリアし、日本生産時と比べて品質で劣る面は一切ありません。

15年くらい前までは、実はアメリカの有名なメーカーの製品もインドネシア工場で作っていましたよ。そんなことからも品質は保証済みです。



Y、東海家具製品の生産工程を教えてください。

N、木取り>>カット>>組み立て>>塗装になります。工程の中では何よりも木取りが全てと言って良いと思います。とても大切です。きちんとした木取りができる職人がいるかどうかによって製品の品質が決まります。どの材をどこに使うかを適切に判断できる職人がいれば自ずと品質は良くなると思います。東海家具インドネシア工場では熟練した職人さんが責任を持って木取りを行っています。



Y、東海家具製品は大量生産品になるのでしょうか?

N、東海家具のコンセプトは、それまで高額でなかなか手に入らなかったクラシック家具を、なるべく良質のまま広く使った頂けるリーズナブル価格で販売することです。リーズナブルな価格で出すためには全て手作りというわけにはいきません。そう言う面では確かにロット生産の大量生産品ではあります。しかし、例えば、曲線は機械ではできませんので、職人さんが手作業で作っています。そういう面では大量生産でも手工芸品でもなく、大量生産と手工芸の中間になるのでしょうか。



Y、他にはどのような所が手作業がなのですか?

N、金具、扉は一本一本手作業で取り付けと調整を行っています。また、スパッタリング塗装等のアンティーク加工、取っ手、金具のアンティーク加工も一個一個手仕事です。そのため、一本一本、一個一個に個体差があります。


※アンティーク加工リモージュW取っ手サンプル画像>>



Y、個体差ですか!! ヴァイオリンなどの高級楽器みたいですね。

N、そうですね。大変微妙ではありますが、カーブは全てを手作業で作るため、厳密に言えば2本として同じ製品はありません。もちろん並べてもほとんどわからない程度ですが、厳密にいえば全く同じではありません。それでもあえて、機械のみで作れるデザインにせず曲線にこだわる。その個体差こそが、東海家具のこだわりの証明と思っていただければと思います。



Y、塗装について教えてください。

N、ほとんどがウレタンです。今後入荷予定のmaisonと一部の商品ははラッカー塗装です。ラッカー塗装は塗膜がないため、傷がつきやすく、紫外線にも弱いのですが、天然の感じを出すにはラッカー塗装が適しています。また経年変化で使えば使うほど、味わいが深まります。



Y、使用している材について教えてください。

N、マホガニー、ミンディ、リンデン等が今使用している木材です。フルールに使われているリンデンはヤナギ科の木材です。ヤナギというと日本ではお化けが出るときのセットとして定番(笑)なので、あれが家具になるのかと思われるかもしれませんが、インドネシアのヤナギは日本のヤナギの印象とは違い大きいです。木目を出さない、潰し塗装の時にはMDFを使用しています。


※MDFとは>>


また、東海家具製品は全ての材に合法木材を使用しています。1本切ったら1本植えることを必ず行っています。違法伐採の材は一切使用していません。材料はすべてインドネシアの木材を使っています。


LEGAL WOODへの取り組み メーカー発行PDFはこちらから>>


また、強度のかかる家具には全て家具耐久試験を行っています。



Y、東海家具さんに注文をすると、在庫管理が完璧で大変仕事がしやすいのですが、在庫管理について特に注意していることはありますか?

N、東海家具では、出荷倉庫の在庫をほぼ毎日、機械と人間が棚卸しています。


Y、ほぼ毎日!!ですか。それは素晴らしいですね。



4.家具のプロならではの豆知識

家具のプロならではの豆知識


Y、購入後、家具のお手入れというのは必要なのでしょうか?


N、絶対に必要です。取っ手のネジ、脚の取り付けネジ等、使っていれば必ず緩みます。そのままにしておくと、脚が取れて怪我につながったり、ネジ穴が開いてしまったりします。


また、水分は厳禁。普段はから拭きをし、汚れが取れない時は少しだけ中性洗剤をつけて広げず、その部分のみ汚れを拭き取りましょう。


そして、紫外線には注意が必要です。ウレタン塗装の中にはUVカットの成分は入っていますが、やはり紫外線をなるべく当てないように心がけてください。


せっかく購入した大事な家具です。初めてお部屋に届いたときのことを忘れずに、こまめに気にして、お手入れしてあげてください。



Y、購入時に気をつける点はありますか?

N、今の家具は安価なものでもなかなか良くできているので、ついつい見落としがちなのですが、必ず引き出しの制度は確認してください。隙間があまりないものを選びましょう。できれば購入時に引き出しは全て出して確認した方が良いです。そしてネジ穴。ネジ穴がバカにならない設計になっているでしょうか?家具は新品時の印象だけでなく、長く使うとどうなるのかを考えましょう。価格の違いはそういうところに出ているはずです。



Y、野村さんにとってズバリ、良い家具とは

N、先ほどと被りますが、隙間なく作ってあるものですね。そして良い材を使っている製品です。


では良い材とは何か?ですが、良い材というのは時間がたってからわかるものです。買ったばかりの時は、良い材も悪い材も見分けがつきません。使っているうちに反ったり、割れたりしてしまう材というのは、乾燥が不十分のまま使ってしまうことによって起こることが多いです。良い材というのは長い年月使ってみて初めてそういった差が表れてきます。



5.最後に

最後


Y、新製品のご予定はありますか?

N、HPとカタログはすでにできているのですが、もう直ぐmaisonシリーズが上がってくる予定です。また、別にリビング用の組み合わせができるシリーズを企画しています。まだ未定ですが、6月の展示会で発表できるかと思います。



Y、メディアに東海家具製品が出るよなんて情報はありますか?

N、問屋さんが出しているのであまりメーカーでは把握してないのですが、ベネチアはトーク番組ではよく使われていますよ。



Y、実際に東海家具製品を見るにはどこに行けば見ることができますか?

N、なかなか置いてもらえないのですよね…。主流ではないと思われているのか、なかなかクラシック家具の広いスペースを使ってのシリーズ展開は難しい様です。しかし、エンドユーザからの問い合わせはとても増えています。小江戸装飾さんでたくさん売れているベネチア家具の評判もここ数年上がっているような気がします。店舗に行けばかなり低価格で見た目の良い家具がたくさんある今、店舗になく、ワンランク上の価格帯のベネチア家具の問い合わせが増え、知名度も上がってきている、不思議ですよね。とてもありがたく、嬉しく思います。



Y、これからも小江戸装飾では東海家具製品をメインで扱っていきます。野村さん、本日はお忙しい中どうもありがとうございました。

N、こちらこそ、ありがとうございました。



編集後記

山下牧人メーカー担当者に直接会ってインタビューし、会社や製品について質問する今回の企画、いかがだったでしょうか?メーカーHPやカタログに掲載されないような興味深い話をいっぱい伺うことができました。


印象深かったのは、良い家具を作るというのは、思っている以上にとても手間がかかるということです。良い家具になればなるほど、工程に人の手仕事が増え、それが製品の個性につながっているんですね。また、東海家具の商品は、取っ手の金具一つとってもオリジナル金具を使うなど、小さな部分までこだわっていることもわかりました。


このインタビューを通して、私も商品の詳細や製造過程、家具の構造など、新たに確認することもでき、とても有意義な時間となりました。


またメーカーインタビュー第二弾も企画したいと思います。


野村さん、この度はどうもありがとうございました。


小江戸装飾 インテリアコーディネーター 山下牧人


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